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フィリピンの都市鉄道

日本では東京、大阪、名古屋を中心に通勤、通学などに使う中近距離の都市鉄道が発達していますが、フィリピンではそういった都市鉄道はほとんど見ることができません。フィリピンで都市鉄道が存在するのはマニラだけで、留学や観光、ビジネスなどでやってきた日本人が利用する機会も多いでしょう。以下、フィリピンの都市鉄道について紹介します。

マニラの都市鉄道の概要

フィリピンの首都であるマニラには3本の都市鉄道が運行されています。このうちの2本がメトロマニラの東側と西側を南北に走り、その2本の鉄道を東西に走る路線がつなぐ形になっています。

切符は名刺大のICカードで回収再利用タイプとなっています。切符は都度購入しますが特に有人販売の窓口では長蛇の列ができることが日常となっています。このため、100ペソのプリペイドカードが販売されており、最後に1ペソでも残っていれば走行距離に関係なく1度だけ乗車することができます。ただし、有効期限は2ヶ月で、期限が過ぎるとチャージが残っていても使えません。各車両の先頭車両は女性専用車両です。

各駅の入り口では所持品検査とボディチェックがあり、セキュリティガードが警備しています。

これらマニラの3本の都市鉄道は、それぞれLRT1、LRT2、MRTと名付けられています。以下、それぞれの都市鉄道について見ていきましょう。

LRT1

LRT1はYellow Lineと呼ばれメトロマニラの西側を南北に走る都市鉄道です。1980年に設立されメトロマニラ南方のパサイ市に本社を置くLight Rail Transit Authorityによって運営されています。

LRT1はマニラ湾に近いタフト通りに沿って南北に走り、メトロマニラ北部のカロオカーン市で東に曲がっています。全長は約20kmで東北端のケソン市にあるルーズベルト駅から南端のパサイ市にあるバクララン駅まで合わせて20の駅を約30分で結んでいます。以前はカロオカーン市のモニュメント駅が終点でしたが、そこから東に曲がる新区間が延伸されました。将来的にはMRT北端のノースアベニュー駅まで延伸される予定です。

LRT1の建設が始まったのは1981年で、資金はベルギー政府から借款されました。1984年に建設工事が終了し運行が開始されましたが、メトロマニラの人口の急増により乗客数も増加の一途をたどり、運行の拡大、鉄道設備や車両の改良、更新も求められるようになりました。そのため1994年から日本政府の援助で増強工事が行われ、日本製の2両4連結8両編成の車両が新規に導入されました。また、3両3連結9両編成のベルギー製既存車両にもエアコンが取り付けられるなどの更新対策が採られました。

LRT2

LRT2はPurple Lineと呼ばれ、LRT1同様にLRTAによって運営されています。メトロマニラ東部のサントラン駅から西部のマニラ湾に近いレクト駅まで東西に走っており、総延長は13.8km、全部で11の駅が設置されています。レクト駅でLRT1のドロテオ・ホセ駅、アラネタ・センタークバオ駅でMRTのクバオ駅で接続しており、メトロマニラの東西を南北に走る両線を結ぶ役割も果たしています。

LRT2は日本政府の大規模な支援によって建設されました。1996年からメトロマニラの交通渋滞緩和事業として日本政府が750億円に上る借款を行い、2003年に運行を開始しました。LRT2では韓国製の車両が導入され、LRT1やMRTよりも近代的で幅の広い車両が走行しています。また、LRT1とMRTの切符販売は有人窓口だけですが、LRT2は自動販売機もあります。さらに、LRT1とMRTが高架の地上区間だけなのに対し、LRT2は高架の他に地下鉄区間もあります。

MRT

MRTはMetro Manila Rail Transit Systemの略でBlue Lineとも呼ばれています。民間出資によるMRTCによって建設され、運営はフィリピン運輸省が行なっています。1999年に運行が開始され、住友商事などの日本企業が保守作業を支援しています。

MRTはメトロマニラの大動脈であるエドゥサ通りに沿って、北のケソン市ノースアベニュー駅と南のパサイ市タフト駅の間を走っています。総延長は16kmで13の駅があります。終点のタフト駅ではLRT1のエドゥサ駅で接続しており、将来は北端のノースアベニュー駅でLRT1と接続し、将来は直通運転も予定されています。

マニラ都市鉄道の延伸計画

人口が1千万人を超え人の動き、物資の動きが活発化した上、自家用車、バス、タクシーなどの通行も増えたメトロマニラは慢性的な渋滞に悩まされています。これを解消するために切り札として投入されたのがLRT、MRTの都市鉄道ですが、現在もますます悪化する道路渋滞を解決するため、マニラの都市鉄道には延伸計画が作られています。

まずはLRT1とMRTを直結し、メトロマニラ中心部を環状につなく計画です。この計画はLRT1のモニュメント駅からルーズベルト駅までの延伸は完了していますが、最後の1区間であるLRT1ルーズベルト駅とMRTノースアベニュー駅との間がまだつながっていません。しかし、LRT1とMRTでは車両などのシステムが異なり、現状では両駅間がつながっても環状の相互乗り入れ運転は難しいと言われています。

また、LRT1は北のブラカン州への延伸計画と、南のカビテ州への延伸計画があります。LRT2は西のマニラ湾方面への延伸はできませんが、東はアンチポロ市への延伸計画が立てられています。MRTにはメトロマニラ東北のケソン市方面への延伸計画の他、南端のタフト駅などからラグナ州、モンテンルパ市、パラニャーケ市への延伸が計画されており、これらが実現するとLRT1とMRTで構成される環状線から、メトロマニラ外郭への放射状路線が形成されることになります。

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